武蔵野簡易裁判所 昭和50年(ハ)147号 判決
原告 東京北ナショナルクレジット株式会社
右代表者代表取締役 大林国剛
右訴訟代理人弁護士 真山泰
同 小谷恒雄
被告 斉藤明雄
右訴訟代理人弁護士 宮沢邦夫
主文
被告は原告に対し金一二万四、五〇〇円およびこれに対する昭和五〇年九月一二日から支払ずみに至るまで年一割四分六厘の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決は仮に執行することができる。
事実および理由
一、請求の趣旨 主文と同旨。
二、請求原因の要旨は次のとおりである。
1 原告はナショナル製電気製品の月賦販売を業とする。
2 原告は被告に対し昭和五〇年四月八日ナショナル電子レンジ一台を左記の約定により売渡した。
(1) 代金は一四万〇、八三八円、頭金一万一、〇〇〇円、残金一二万九、八三八円は第一回分同年七月六日に五、三三八円を支払い、爾後毎月六日五、三〇〇円宛(但し八月分、二月分については一万五、〇〇〇円を加算)一五回に分割して支払う。
(2) 割賦弁済を怠り催告期限までに履行しないときは期限の利益を失う。
(3) 遅延損害金は年一割四分六厘とする。
3 被告は同年八月分以降の割賦金を支払わず、かつ原告からの同年九月一一日までの催告期限を徒過し、割賦弁済による期限の利益を失った。
4 よって被告に対し売掛残金一二万四、五〇〇円およびこれに対する昭和五〇年九月一二日以降完済まで年一割四分六厘の割合による遅延損害金の支払を求める。
三、さらに原告は、本件品物は被告の妻あつが購入したもので、右は日常家事債務の範囲に入るから、被告は原告に対し連帯債務の責を負っている。仮に然らずとするも、右あつは被告の印鑑を使用したから表見代理を信ずるに足る正当事由がある旨主張した。
四、被告は原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、請求原因事実1は不知、同2、3は否認すると述べ、被告は本件売買をしたことはないし、品物を見たこともないし、契約書の印影は冒用されたものである。妻あつは昭和五〇年六月中家出して所在不明であり、本件品物も被告との家庭生活に利用するためではなく、他に売却して遊興費に費消するためのものだったと推測されると述べた。
五、≪証拠省略≫によれば、請求原因1、2、3の事実および本件品物は昭和五〇年四月八日被告の妻あつが原告から被告を購入者とし、自己を連帯保証人とする約定のもとに買受けたものであることが認められる。次に右あつの本件電子レンジ購入が日常家事債務の範囲に入るかどうかであるが、諸種電気製品が普及し数多く家庭生活に入っている現在、大都市生活者の場合は電子レンジの購入をも日常家事債務の範囲に入るものと認めても差支えないものと考える。しからば(同情すべき点大であるけれど)被告は本件債務の支払をまぬがれないことになる。
よって原告の請求はこれを認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 並木撃)